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■去る24の日曜日、幕張メッセで開催されましたワンダーフェスティバル、及び当ブースまでお出でいただきました皆様、まことにありがとうございました。
いつもの事ですが、終わった後はやっぱりダウンしてしまいました。
■会場で発表になりましたが、threezero社から発売予定の「ドロヘドロ」カイマンに続く第二弾、「心」の原型を担当させていただいております。ユーザーとしては散々関わってきましたが、原型師としては、初めてのthreezero参加です。
素体部分はthreezero側で開発したもので、自分は顔やマスク、両腕、手首、靴、オプション等、胴体と脚以外の部分を作成しております。
展示品は制作途中のもので、まだ改良や仕様の検討はなされる予定ですが、林田先生の監修もガッツリ受けておりますので、心先輩ファンの皆様はご期待頂ければ幸いです。
■figmaでは、血界戦線の制作が発表になりましたね。がんばります。
あと、まさかのDOTA2から、アンチメイジとウインドレンジャーが発表になりました。
Dota2、まさかすぎるタイトルですね。日本ではあまりプレイヤーの多いゲームでは無いですが、海外では大変メジャーなMOBAタイトルで、VALVE社まで行ったりしてひっそり作っておりました。海外でもfigmaが受け入れてもらえるシリーズになると嬉しいなぁと思います。
■メガミデバイスも、ワンフェス翌日から受注開始になりました。
ランペイジ鳥山さん、コトブキヤ野内さん、超がんばってます。
こちらで作っている、オリジナルマシニーカも負けないように気合を入れねばなぁ、とふんどし風にたくしあげたパンツをギュッと締め直す思いです。
■会場で展示させていただきました、久宝金属製作所さんの新FDM「Qholia」は、展示場所が3D技術系のブースが集まった場所だったこともあってか、注目度が高く、終日様々なご質問を頂きました。出力サンプルも多数展示致しましたので、直接手にとって見て頂いた方も多く、好意的な反応を多く頂いたように思います。
■一方で、浅井は話している相手に笑われてしまう程「form2売るマン」と化しておりました。
これは、会場で伺った質問の多くが「原型用途に最適のプリンター」を望まれる質問だったからです。
先日の記事でも触れましたが、今現在、フィギュアの原型用途という前提で、表面の美しさや後加工のしやすさ、そのクオリティに対するコストバランスといったあたりを踏まえると、form2はベストバイと言えるプリンターと思えます。既に何らかのFDMを一台所有されているのであれば使い分けも可能ですから尚更です。
QholiaはFDMとしては素晴らしい出力結果を出せると思いますが、FDMとSLAの構造的な壁を打ち破れるわけではありません。
ですから、原型用途に3Dプリンタの購入を考えておられ、予算に余裕のある方には、積極的に(まだ耐久性の確認は出来る時期ではない事は交えつつ……)form2を勧めさせて頂きました。
一年持たずに壊れたら、またこのブログで壊れたぜ糞ファック報告があるやもしれません。
浅井はformlabsとも、form2の販社とも何らご縁はありません。念のため。
■FDMを求めておられる方には、あらためてzortrax M200もお勧めしたりしていました。
現状、ノズル径を変えることができないM200は、表面の平滑具合や精細感で言えば、Qholiaに劣ります。Kickstarterでの初回発売から2年、日本での販売が始まってから一年半経つのですから、日進月歩の勢いで状況が変化する出力機界隈においては当たり前です。
しかしM200には、それだけの期間、多くのユーザーに使われてきているという実績があります。
樹脂もスライサーも専用品の縛りはありますが、その分問題の範囲は限られ、トラブルへの対策も練られており、かなり安定した出力ができます。
ファームウェアも洗練され、以前よりもずっと扱いやすくなりました。
また、日本においては代理店の一つであるアドウイクスさんの積極的な情報発信、フォローが期待できます。facebook twitter twitter2(気軽に相談できる相手というスタイルを保っておられる事は本当に大きいです)
3Dプリンターは、日本の家電のように安定した機械ではありません。今回出力できても、次はウンともスンとも言わない、という事は少なからずあり、不安が常につきまといます。
出力結果の良さは目に見えやすい魅力ではありますが、実際に扱うにあたっては、安定性、コスト、サポートが揃って、ようやく「買って良かった」と感じられると思うのです。
実際、我が家でのプリンター稼働率は、今現在に至るもM200が一番多く、これからも、多少お金がかかっても、オーバーホールなりで長く使える術は無いかと思案しているくらいです。
原型用途としてはドラフト目的になる事が多いのは事実ですが、その前提でお勧めする、という観点からすれば、M200はバリバリの現役なのです。
浅井はzortrax社とも何らご縁はありません。念のため。
でも昨年のWFで、アドウイクスさんからはお饅頭をいただきました。賄賂効いてます!
■展示までやってるのだから、Qholiaの宣伝をしろよ、とも思うのですが、この現状認識は、Qholia開発者である古川多夢さんとも共有しています。
QholiaはFDMとしてはとても美しい結果を出せます。僕が知る範囲では最高レベルです。
FDMのメリットである、強度、軽さ、コストの安さに、
弱点であった表面の美しさまでも備えています。
良く言えば万能です。
しかし、高い次元ではあるものの「中途半端」とも言えます。
原型用途で重視される、表面の美しさのみに注目するのであれば、高額な光造形機は勿論、60万円と相当安価な所まで降りて来たform2と比べても差があります。
信頼性も、試験の範囲内では良い結果を出せていますが、量産機が長く使われてきたzortraxのような実績があるわけではありません。古川多夢さんお一人で作られているQholiaは、筐体の量産にも検証にも時間がかかってしまうのです。
このメリット、デメリットについては、これまで幾度も、無視することなく多夢さんとの会話に上がっています。
■3Dプリンターの性能、使い勝手は、簡単には言い表しづらいものです。
これまでかなり多くのプリンターを使ってはきましたが、設置する環境、気温、使う材料、出力データの形状、スライサーの設定で、その出力結果は大きく違ってきます。同じ機械であっても、同じ結果を得られるとは限らず、流通の少ない機械ゆえに、パフォーマンスの差にも気づかなかった、という例は少なからずあったと思われます。
高額なプリンターは、代理店による保守サービスでパフォーマンスを保ち、zortraxは先述の通り、スライサーや樹脂を専用品とする事でバラつきを抑えています。form2は、form1を多量に販売し、そして膨大な量が押し寄せたであろう修理対応経験やクレームという痛みの末に、パフォーマンスの落とし所を見つけたのでしょう。
3Dプリンターでの出力作業そのものに興味を持つ、プリンターマニア的な立場であれば、専門知識を集めながら細かな調整を行い、パフォーマンスを引き出す事も出来るかもしれませんが、造形の為にプリンターを購入した人にとって、その研究を独力で行わねばならないのは重荷ですし、メジャーなプリンターが海外製である現状では、コミュニティもその多くが英語と中国語で構成されており、英語に不慣れな日本人にはハードルも高いでしょう。これは僕自身がストレスを感じてきた点なのです。
■僕がQholiaに興味を持った最大の点は、美しい出力結果を得られると共に、トラブルに対して開発者本人が日本語で対応、説明でき、日本語を中心としたコミュニティで集合知を高めてゆける可能性がある、という点です。
単に「優れたプリンター」では無く、環境を含んだメリットを期待できる点、それが国産で行われる事に、僕は期待と魅力を感じています。
これはスペックとして比較できるものとは少し違うメリットです。
ですから、ワンフェス会場で興味を持って声をかけてくださった方々にも「Qholiaのお勧めできる点はこういった事だと思う」とお話させていただきましたし、希望される用途によっては、form2やzortraxを勧めさせていただきました。
実のところ、久宝金属製作所さんともビジネスとしてのお付き合いや契約関係は無く、Qholiaの紹介は、浅井個人の期待と趣味でやらせて頂いております。
故に、宣伝文句では無く、浅井個人の所見として、話し、書かせて頂いておる次第です。
■3Dプリンターなるものを使いはじめて、4年ほどになります。
切削機を含めるなら、20年近くにもなってしまうでしょうか。
その使い方、ワークフローも、時期によって大きく変わってきました。
FDMは原型作業には必要無い、と思っていた時期があります。
出力作業の9割がFDMになってしまい、SLAが殆ど眠っていた時期もあります。
不必要だと思っていたFDMによって可能性の幅が広がり、新たな仕事を得た事や、夢のマシンだと思っていたSLAの扱いづらさに、限界を狭めてしまった事もあります。
今は、FDM7割、SLA3割と言ったところですが、
一年後の環境は、さて、どうなっているでしょうか。
■一年後といえば、今後のWF参加は未定です。
多分出ると思いますが、やめちゃうかもしれません。
なんだか、色々未定な昨今であります。