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■Form1、更にその後
 前回、Form1の追加レビューを書いてから暫く後、Form1、壊れてしまいました(笑
その壊れ方が、自分がDW等で経験してきた不調とはちょっと違うものであり、その過程を画像に残していた事もあって、後日談として記しておきたいと思います。
 
 不調は突然訪れました。
出力出来なくなったとか、エラーを吐いたとか、そういった明確な不調ではありません。出力品がうっすら横(筐体前後方向)に広がるというものでした。
どこか一箇所がおかしい、という感じでは無く、全体に、なだらかにです。
仮にForm1のみを使用していたら、しばらくはその問題に気付かなかったかもしれません。その時は、丁度ワンフェス直前のタイミングだった為、「寝ぼけて造形をミスしたか」くらいの印象でしかありませんでした。(※その部品は仕事で作っている部品の為、公開できません) 
 ワンフェス終了から数日経ち、再度データを確認して再出力を行ったのですが、やはり出力物がおかしい。データと比較しても、誤差が大きすぎる。
そこでDW028を使い、全く同じデータを出力してみた所、こちらは理想通りで、どうやらデータでは無くForm1に問題があると判断できました。
 
より詳しく検証を行うべく、以下のようなデータを出力してみました。
 このデータは、真円の筒型形状をしています。
Form1の軸面に対して根本を繰り抜いてありますが、これは形状に関係無く起こりうる問題なのか、形状によって更に変化が大きくなるのかを調べる目的で開けました。
その結果がこちら。
 
 
 伸びてます。伸びまくってます。
左側は最初の出力品、右側は「マジか!?」と思ってもう一度出力したもの。2つの出力タイミングはわずか数時間の差でしたが、時間経過と共に明らかに伸びは激しくなっています。
 


  
 こちらは、伸びの激しかった方の部品を真上と真横から見た図です。
単純に伸びているだけでなく、不均等な伸びです。
真横から見ると、形状が変わる部分でも変形していますし、真上から見た時には横に広がっているだけでなく、少し斜めにも引っ張られています。
 
 これでは使い物にならないと、Formlabsに連絡を取りました。
サポートはユーザー登録された専用の連絡画面でチャット状に行います。
先程の画像を送り、現象を説明。説明は英語で行いますが、google翻訳で作った短文を繋ぎあわせただけのものです。それで充分通じました。
尚、先方の反応はとても迅速で丁寧なものでした。
 
 これこれこうなのだが、何か改善方法はあるか、との問いに、
「まずはこれを出力してみてくれ」と指定されたデータがこちら。
 
 
 Form1のテストプリント部品としてユーザーにはお馴染みの蝶形クリップです。
サイズの違いや5箇所への配置は、機械のどこか問題なのかを把握する為なのでしょう。早速それを出力してみた結果がこちら。
 
 
 うわお。
 伸びが更にひどくなり、ついにはプラットフォームを飛び越えて消失してしまっています。もう伸びてるどころの騒ぎではありません。中央は失敗していました。
こちらの結果をformlabsに伝え、哀れ我が家のForm1は、返品交換となりました。
 
 何故、どこが壊れたのか、ツイッター上で他のユーザーさんの意見も色々と伺えたのですが、現状では分解して保証を潰すわけにもいきませんし、明確な理由は解りません。
ただ、他のユーザーさんとのやりとりの中で、本機に使われているらしいガルバノスキャナが、かなりの低価格で販売されている事。また、日本に到着したForm1のうち、数十パーセントという割合で返送修理対象になっている事などを教えて頂きました。
本体の価格から考えて、部品安い事は当然想像出来ますが、返送率の高さはちょっと想像を超えた割合でした。返送される理由自体は、皆さんそれぞれ違うとは思いますが、自分と似たケースの方も居られ、自分にしても、さしてヘビーに扱っていたわけではありませんので、いくらなんでも寿命という事は無いはずです。
(実働で一ヶ月、それも稼働は3日に一度ペースなのですから)
 
 Form1、残念ながら、機械としての信頼性はまだ高くは無いようです。
これがForm1固有の問題なのか、それとも今後多く登場するであろう、近い価格帯の同様機構を持った機械にはついて回る問題なのかはわかりませんが、現状に限って見れば、やはりまだまだ「今後に期待」の実験的製品ではあるなと言わざるをえません。
 交換され、戻ってきたForm1が、今度はどれだけ持つのかも興味深いところですが、もしまた壊れたならば、またアメリカまで返送するよりは、安い部品を探しての自家修理という選択肢も、ユーザーさんによっては考えられると思います。
この機械が安定して使えると言える時期は、そういったユーザーさん達による自己修復の情報が揃ってからなのかもしれません。
 
 で、我が家のForm1
回収には先方からピックアップの業者が手配されるはずで、その催促はしているのですが、3週間経ってまだピックアップされません。
 交換完了まで、まだまだ一波乱ありそうな予感です(笑)。
 
 
 
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■早くも半年が経過し、明日はいよいよ、冬のワンフェスとなりました。
例年ならば、販売物や実演等の予定を告知させていただく所なのですが、
今年はとても残念なお知らせをしなければなりません。

明日、2/9のワンフェス、浅井のブースは非販売、無展示となります。

販売物が無い事は、ある程度早い段階から解っていたのですが、
そこに体調不良が重なり、現在も回復しているとは言えない状況の為、
展示の準備、搬入も含め、展示品の終日管理体制を用意する事も難しくなってしまいました。
ギリギリまで出来る範囲の検討を行ってはきましたが、
今回は如何ともする事が出来ませんでした。
ブースには事実上の欠席を示すパネルだけがあると思われます。
ご期待頂きました方々には、本当に申し訳ございません。
20数年、ワンフェスに参加してきましたが、
2014年は、これまでで最も情けないワンフェスとなってしまいました。

会場には足を運ぶつもりですので、ブース付近には滞在していると思います。
例年のようにブースベタ付きというわけではありませんが、
どこかでお目にかかれましたら、お声がけいただければ幸いです。


■昨日ツイッターで知ったのですが、コナミスタイル、東京ミッドタウン店さんで、
2月22日に、武装神姫 特別販売会というイベントが行われるそうです。

これに合わせたわけでは無いのですが、来週2月15日、土曜日、
当方の通販も、最終販売を行います。
ブルーライン、ハイドシリーズ、アウタスキン、ファニカ、
また、これまで販売を行っていなかった、
ブルーラインやハイドファイアの、アウタスキン個別販売も行います。
少数ですが、過去限定色として販売したカラーも、発見した在庫分に関しては販売、
店舗取扱の終了したパラベラムB3、各キット付属部品だったパラベラムS1.2も、
個別に販売致します。
ジョイント類を除き、大部分は今回で絶版となります。
既にMMS素体自体の供給が無く、楽しめる人を選ぶキットとなり、
(ブルーライン、ハイドシリーズ、アウタスキンはトランスキットであり、
MMS1st、3rdトールの素体が必要です。 ※ファニカは単体で問題ありません)
欲して下さる方がどれ程居られるのか、不安は尽きませんが、
一区切りとなる今回、お付き合い願えれば幸いです。

よろしくお願い申し上げます。





■ここしばらく、自分の造形仕事にはZBrushという3Dソフトが欠かせなくなっています。このソフトは直感的に、手早く形にできるというのが魅力的で、YouTubeなどでも、あっというまに造形される人たちの凄い映像を見る事ができます。
 昨年、パシフィコ横浜で開催された、CEDEC2013でも「スカルプト・マイスター!」という企画が催され、カプコンの黒籔裕也氏、バンダイナムコの重山孝雄氏、Double Negative Visual Effectsの田島光二氏(ハリウッド風進撃の巨人パロディでご存知の方も多いと思います)、スクウェア・エニックスの平田佳也氏が、わずか2時間で四聖獣を作る映像が公開され、これは今もニコニコ動画で作業風景前編を見る事が可能です。
 
 顔だけを作る、適当なバストまでを、見える範囲だけ作る、という事なら、2時間での造形は出来なくもありません。しかしこれらの映像で驚いたのは、龍の下半身など、デザイン的にオミットした部分はあっても、基本的に全身に近い範囲で造形されていることです。全身を作るということは、手間がかかる部分を見せないという誤魔化しをせず、全身から逆算した時間配分を守って作業されているはずです。しかも、事前にカスタムアルファやベースメッシュは用意されていません。基本機能のみです。
 
 また、先頃榊馨さんが公開された動画は、時間こそ7時間超ですが、漠然と形を作るのでは無く、非常に整理された綺麗なデータとなっており、的確な機能の扱いはデジタルのメリットを強く感じさせてくれる必見の内容です。
 
 自分も、遊びとして数時間で何かを作る事はあります。それは如何にも手早く作ったように見えるのですが、実際には「2時間で出来ました」では無く、「2時間でやめました」なだけだったりします。髪の毛をつくれば時間がかかる、だからハゲを作っているだけ。全身を作れば時間がかかる。だから胸像風にしているだけであって、一見して短時間で作れているようでいても、実際に手が早いのとは、ちょっと違うのです。見えない所は作らない事も多いですし。
 
 そこで、自分がどのくらい時間を費やし、どこで躓きやすいのか、テストがてら記録をとってみました。
 今回の対象は、Fate/staynightのバーサーカーです。
 とある原稿の素材用に必要だったもので、丁度良いと選びましたが、ツルツルとした女の子キャラよりも作りやすいから、というのも理由でありました。
 ちょっとでも有利な条件にしようと悪あがきをしてしまったわけですが、これが期待を遥かに下回り、自分の現状を思い知る結果となり……。
 2014年1月現在の記録として、記憶が鮮明なうちに書き記しておきます。南無。
  
30分経過。
Zスフィアで全体をざっくり作り、アダプティブスキンにしてから整えている段階です。原稿用なら上半身だけあれば良かったのですが、今回は全身にしました。
指はコピペするつもりで、この時点では作っていません。
 
 
60分経過
ポリゴンは荒いまま、形状を整えていってます。指は一本作ってから、コピペして大きさを調整。Zスフィアや、指のコピペなど、早く作る事を意識して、普段あまりやらない方法を選んでいるものの、この時点で「スカルプト・マイスター」の皆さんが使われていた持ち時間を早くも半分消費。
 
 
90分経過
ポリゴンを細かくしてあちこちを整えはじめました。指はダイナメッシュで一体化。作っている時間よりも、整える時間の方が時間を食っているような気がします。サブモニタにはバーサーカーと人体の資料を映し、手元にも資料を置いて確認しながら作業を進めました。
 
120分経過
CEDECだったらここで終わりです。
顔を作り、プロポーションをちまちまと弄っています。ディティールを配置した後にプロポーション変更が効く、という所はデジタルの強みで、僕はその強みに頼っている事を痛感します。粘土だったらプロポーションを変えた所はディティールも作り直しですので、もっと多くの時間を必要にした事は間違いありません。
 
  
150分経過
髪の毛をZスフィアで配置して造形開始。ここからものすごく手間取りました。細く尖った髪の毛自体、単純なブラシ作業だけでは作りやすい形ではありませんし、髪の毛を配置する事で「バーサーカーに見える、見えない」が気になりはじめますので、髪の毛以外の顔やプロポーションも頻繁に弄ってしまうのです。落書き気分の粘土遊びならば、見える角度だけそれっぽく見せて誤魔化しますが、今回それは避けるつもりでした。目を背けていた苦手部分がはっきりとわかる一幕でした。
 
  
180分経過
3時間が経ちました。もう延々と髪の毛を作っています。
全然目立った進行が無いように感じます。
 
180分経過その2
後ろからみるとこんな感じです。もうただただ、ちまちまと髪の毛を調整。皮膚は表面にアルファ(立体テクスチャのようなもの)を押してしまえば見た目のハッタリは効くのですが、頼ってしまいがちなので禁止としました。また、髪の毛の表現には、スネークフックブラシやファイバーメッシュという選択肢もありますが、いずれも原型用途を目的とした技術には不向きと考え、今回は避けました。
 
210分経過
いやーん、全然変わってない。まだ髪の毛を整えつつ、所々細いラインを入れはじめたあたりでしょうか。この後も、髪の毛は最後まで足したり消したりを続けていました。初音ミクのようなパキッとした髪の毛だったら、別ソフトでないと自分は仕上げられません。
 
   
240分経過
この段階まで、胴体のトポロジーもダイナメッシュを使用した適当なものでしたので、Zリメッシャー→プロジェクトオールで、ポリゴンの配分を調整、慣らしたり失敗した所を整えたりしました。こういった直接造形と関係無い部分でも、結構時間を食ってます。
あと、今気づいたのですが、この画像のみパースがかかっていますね。作業時に切り替えていたからだと思いますが、ちょっと印象が違います。
 
270分経過
全身のポリゴン配分を調整した事で、細かめの情報を足していけます。前述のように、アルファは避ける方向でちまちまと描き込んでいきます。
なんか、エンジョイ&エキサイティングの人みたい。
 
  
330分経過
手首、足首のリングと、スカートのアタリを作ります。部品が揃ってくると、全身のバランスも気になり始めますので、プロポーションに大きな変更が入っています。上手い人なら、調整無しでいきなりベストバランスなんですが、自分には無理なのです。デジタル補正万歳。
実は270分の時点で、もうスピードとか無理っすよ……という諦めが発生しており、30分刻みのスクリーンキャプチャも忘れてしまった為、一時間後にとんでいます。リング、スカートとも、プリミティブからの変形ですが、実際にはローポリでベースメッシュを作った方が早いと思います。ZBrushにローポリの作図機能があると、かなり便利だと思うんですけどどうですか、そんな事無いですか。シャドウボックスとか使った方が良いのかなー。
 
 
390分経過
更に一時間後。スカート回りのディティールを入れました。単純な形状ですが、かっちりと形が決まったものはやっぱり面倒くさい。スカートはきちんと全体に薄くはなっておらず、上半分はムクの状態です。ここで、金属部分と布部分の差を作るために、ついにアルファを使ってしまいました。カスタムでは無くデフォルトで入っている範囲のものですが、ブラシだけで質感を分けるのは無理でした。
もう6時間越えちゃっております。しかもここで、タイマーを止めてご飯を食べたりしております。作業自体は止まっていたものの、思考は続いていたでしょうから、これはちょっとズルじゃないかと思いますが、もう無理ー。むーりー。
 
終わり、もう終わり!と決めた時には、500分を経過しておりました。8時間以上です。
ご飯を食べた事でもう緊張の糸は残っておらず、作業速度は酷いものとなりました。
ダラダラ~と武器を作り、のそのそ~と微妙な配置をしましたが、この荒々しくも大雑把なデザインの武器だからなんとか作ったものの、繊細なデザインを施した武器であったなら、もうやめてしまっていた可能性が大なくらい、集中力がありませんでした。
 
 そんなわけでバーサーカーでした。細部の情報量が無い……。
 この後、ざっくりと色を塗ったり、せっかく色を塗ったのにモノクロに加工したりして、本来の目的だった原稿に使用しました。
 始める前は「何とかなるんじゃね?」と思っていたのですが、いざやってみたら、もう全然「スピード」スカルプトじゃありませんでした。
 スピードスカルプトばかりを扱った書籍が発行されているのですが、そちらの持ち時間は一人6時間、実際には皆さん4時間ほどでfixされていています。前述の田島さんが2011年に登壇された講義では、バストモデルではありますが、今よりもずっと扱いづらい頃のZBrushで、講義をされながら90分だったそうです。
 やはり、全身を作るか否か、という差はあるとは思いますが、今回痛感したのは、全身か部分かという事よりも、最終的な落とし所を前提として考えるべき時間配分のマネジメント力の重要さでした。それに、今回のバーサーカーは、手早く作る事を目的に割り切った造形でしかありません。榊馨さんの公開された動画のように、整理されたものでは無いのです。
 
 単純に手が遅いのか、ツールの理解が足りないからか、落とし所が下手なのか、その全てなのか。造形力そのものに関しては頑張りますとしか言いようも無いのですが、ツールの理解については我ながら不足している自覚せざるをえませんでした。直感的に形が作れるソフトであるがゆえに、時間さえかければ複雑な機能を使わずとも、それなりに何とかなってしまいます。その為、それ以上の理解を怠ってしまっていた、という事なのかもしれません。ゆっくりやっていると気にならなかったものが、短時間に集中して作ると表面化してきた感じです。
 反省点は山盛りありますが、現時点での自分を測れるという点では、記録を取りながらの作業は有効ではありました。
 こと自分は、ゴールから逆算して配分を決めるのがとても苦手です。
一部が完成して残りが手付かずよりも、全体的に70点で完成させてから底上げを図る方が、最終的なクオリティは上げられると、経験上ではわかっていながら、ずっと苦手なままです。今回はあらためてその苦手要素を知ることができました。

 何やら、反省点ばかりで、書いていて尚更凹みつつあるのですが、短めの時間でぶっとばしに作る作業は、楽しいのもまた事実です。自分の問題点を浮き彫りにさせる練習として、きちんと時間を計りながら進めるのは、学べるものがありました。
 
 
 尚、このバーサーカーは。30日発売のTYPEMOONエースVol9に、半ページのコラムイラストとして使用しました。
 つまりこの記事は、長々とした宣伝だったわけですね。
 
どっとはらい。
 
 
■その後のForm1
 前回書きました、3Dプリンター「Form1」。
先日の段階で予測していたズレの問題や、樹脂の違い等を検証してみました。
ただ残念ながら、今回はスッキリとした良いオチがありません。
検証結果には法則性を見つけられず、このテキストの最後に待ち受けているのは「結局、自分には改善出来ませんでした」という実に情けないものであります。
 とても胸を張れるようなレポートではありませんが、前回書いたいくつかの予想が、その通りでは無かったという事を明らかにしておく意味でも、公にしておこうかと思います。情報価値としては薄い記事になりますが、前回の記事を読んで下さった方は、訂正としてご一読頂ければ幸いです。
  
■ズレに対する検証
 前回の記事では、出力品に発生するズレ(積層線では無い、規則性の見出し難いズレ)は、部品の細さ、薄さと、樹脂の柔らかさが影響したものでは無いか、と予測しました。それを検証する為、今回は下図のようなモデルを出力しています。
 
 
 テストしたのは、段差のある柱2種と、1mm厚の板、2mm厚の板、1mm厚の板をT字型に組み合わせた物の5種となります。段差のある柱は、一つが真っ直ぐ、もう一つは斜めにセットしました。柱のサイズは、根本で5mm、先端で1mmです。モデル自体は、太い方を下、細い方を上として作っていますが、Form1はプラットフォームを上に引き上げる形式ですので、実際に出力される際は、この画面のような形になります。また、2セット同時に出力しているのは、出力箇所による誤差を確認するためです。
 
  
 ここで注意しなければならないのは、Form1は筐体の正面と、出力する際のCAM画面が90度違うという事です。見た目の正面は、ボタンや液晶画面がある面に思えるのですが、CAM画面での正面は向かって左、樹脂タンクの可動軸側が正面に設定されています。おそらくFormlab側でも、この面が一番綺麗な面が出せるものとして正面に設定しているのでは無いかと思われます。
 今回のテストモデル2セットは、筐体から見れば左右、画面で見れば前後に配置している形になります。
 以降、この記事では、CAM画面上の正面を軸側、後ろを開き側と記載します。
 
 
 グレー樹脂、軸側。
 前回の記事で、バットマンの耳だけが激しくズレていた事から、樹脂の柔らかさが影響しているのでは無いか、という仮説を立てましたが、それは早くも否定される結果となりました。1mmの先端も、5mmの根本も、ズレに大きな違いはありません。むしろ根本に近い部分に大きなズレがあります。バットマンの耳よりもあきらかに細い部品がズレていないという事は、ズレはサイズとは違う理由で発生している、という事になります。
 1mm厚の板、2mm厚の板でも、厚みによる差は見られませんでした。
 唯一、T字型の板に、ズレでは無いのですが、表面が溶けたような荒れが発生していました。これは時折発生するのですが、似た状態がDWでも起きる事があり、その際は代理店から、樹脂のコンディションが影響しているのではないか、という説明を受けました。これもその類かもしれません。
 
 
 グレー樹脂、開き側です。
 1mm厚の板は洗浄時に紛失してしまったのですが、その他の部品は軸側と目立ったクオリティの差はありません。軸側と開き側では、構造から思い浮かべがちなズレはそれほど出ない、という事かもしれません。
 しかし画面上の左右(プラットフォームの支柱側と液晶画面側)は、どの部品もズレが目立ちました。これは前回の記事で、1/6の頭部に見られた現象と同じです。仕事でかなりたくさんの出力を行いましたが、この傾向は共通していました。
 
 
 クリア樹脂 軸側配置
 

 クリア樹脂 開き側配置

 こちらは前回の記事では使用しなかったクリア樹脂です。画像で見ると、僅かに開き側の方が荒れているかなと感じますが、実見では区別が付かないレベルです。ツイッターで「クリア樹脂の方がエッジは立つ」と教えて頂いたのですが、確かにエッジはシャープな印象がありました(画像では伝わりづらいかもしれません)。ただ、樹脂そのものの硬さは、グレーよりもほんの少し柔らかいようです。
 こちらも、軸側、開き側での配置による差は少なく、面も綺麗なものでした。対して支柱側と液晶画面側のズレは目立つ、という感じです。
 
 
 今回、何故か2mm厚の板の根本部分に気泡のような未硬化部分が発生しました。気泡のような形状は全て微妙に異なりますので、データ側での欠損では無いはずですが、不可解な事に、出力位置やポリゴンの細かさを変えても大体同じような場所に発生しました。上記画像では、出し直してみたものも含め、3つの2mm厚板すべての根本に発生しています。
 グレーの方も、気泡では無いのですが根本に近い位置に大きなズレが確認できました。
 ズレに関しての憶測として、Form1は樹脂タンクの底にシリコンゴムを使うのですが、そのゴムは流し込みで成型されている為、厚みが正確ではありません。DWではタンクごとの調整作業を求められますが、Form1にはその工程がありませんので、根本付近ではゴム厚の誤差がなんらかの影響を出しやすい可能性が考えられます。尚、自動サポートは若干高めに設定されており、自動サポートを使う限りは、出力品には影響しないかと思われます。
 
■これは実証例が少ないので、話半分で読んで頂きたいのですが、自分の環境に関しては、グレーに較べてクリアの方が硬化トラブルが多かったです。これまで、ブログに上げていないものも含めて、グレーの失敗は一度も無いのですが、クリアの方は、今回のテストだけでも3回失敗しています。失敗の内容は、出力途中で硬化が連続せず、部品が切れてスライスだけが樹脂層を漂う、というもの。前述の気泡も関係あるかもしれません。もしこれが偶然で無く、何かしらの理由あってのものだとしたら、それは樹脂の問題というよりも、CAM上でのクリア樹脂設定(Form1では樹脂ごとにプリセットされた設定を選択します)に何かしらの問題があるのでは無いかと思われます。
 
 前回の記事で書いたDWの樹脂ですが、こちらはもう全くダメでした。反応はするのですが、どのプリセット設定でも、溶けかけたグミ程度の硬化しかしません。
 樹脂によって硬化する波長は違いますが、これまでDWでは他社性の樹脂も設定次第で固まるケースがあった為、駄目元半分、期待半分という所だったのですが、今回に関しては駄目でした。
 ただ、これもツイッターで見かけた話なのですが、DLP式のB9creatorで使用する樹脂とForm1の樹脂のミックスは硬化した(しかも出力結果は良好だった)という話もあるようですので、いずれForm1の設定を自由に触れるようになれば、このあたりの事情は変わってくるやもしれません。
  
  
■冒頭でも書きましたが、今回の実験では、改善の為の成果と呼べるものは何ら得られませんでした。これ以上は、レーザーの繰り返し照射精度や、樹脂ごとの硬化波長云々のレベルになってくると思うのですが、そうなると自分ではお手上げです。知識も技術も足りませんし、そこまでしてForm1のクオリティを追求するなら、DWで出力します。
それでも、経験則としてForm1の傾向を挙げるのであれば、
 
・軸側と開き側の差は、0では無いがそれほど大きく無い。
・支柱側、液晶画面側はズレが発生しやすい。
・タンク底面の近い場所ではトラブルの可能性あり。この部分は大きめのサポートを設け、出力品に悪影響が出ないようにする。
 
くらいのものでしょうか。
うーん……大山鳴動鼠一匹。
 
 さて、検証は上手くいきませんでしたが、実のところ、Form1はかなり気に入っており、毎日のように出力を行っております。回転率はDWの何倍にもなります。
 ランニングコストが安く、出力までの手間が少ない上、出力の失敗も少なく安定している事から、可動検証や形状確認を気楽に行えるのが、原型用途としてはとても有用です。
 また、硬化後の樹脂も非常に研磨しやすく、スポンジペーパー程度でツルツルになりますので、研磨してしまって構わない形状であれば、検証用だけでなく原型としての使用も十分に可能です。硬度はそれなりにありますので、ディティールを掘り足すのは大変ですが、不可能というわけではありません。
 接着も、硬化前の樹脂を塗りつけ、紫外線ライトを当てておけば強固に接着できます。(ただし、奥まった部分だと紫外線が行き渡りませんし、ライトを当てすぎると反る事がありますので注意は必要です)

 フィギュアが出てくる夢の機械では無いものの、原型作成には十分役に立つ道具である事を再確認して、実験はとりあえず一段落としたいと思います。
 
 
呆れるほど長い記事になってしまいましたん。
 

 
■夢を見る前に。(3Dプリンターの知識がある方は読む必要はありません)
 3Dプリンターの時代がやってきた、というような話がネット界隈のみならず地上波のニュースなどでも目にするようになってきました。確かにこの数年、宝飾品業界や歯科医療など、ごく一部で扱われてきた出力機は、小さなメーカーやKickstarterのようなクラウドファンディングサイトで多く目にするようになり、価格も個人で手を出せなくも無い価格になってきました(それでも個人消費としては大変高価な部類ではあります)。
 しかし、実際に出力機を触ってきた者にとっては、喧伝される「データさえあれば、ご家庭でプラモデルが作れる」「これからのフィギュアがデータ販売になる」というような言説が、「コピー機発売!これから本は全部コピー機から出てくる時代の到来です!」程度に一足飛びな話であるなーと感じていたりするというのも事実です。
 実際、3Dプリンターでの出力は、個人ユースで手に届くようになった数十万円のものはおろか、業務用に用いられる数百万~数千万円するようなものであっても「期待していた夢の立体コピー機」には程遠く、それだけがあっても、どう使えば良いか持て余すしかないようなものであったりします。
 扱いは面倒、トラブルは多く、ランニングコストも紙のプリントとは比較にならない程に高額です。なにより、データを作成する為のソフトを習得する手間、費用、そして習得できるか否かのハードルの高さは、ちょっと趣味でやってみようというには、相当に腰を据えてかからねばなりません。現実的に、そこまでしてそういったスキルを手に入れよう、運用していこうと考えられるのは、コンシューマーサイズのインダストリアルデザインをされている方や、原型師くらいのものでしょう。
 しかし、個人ユースとしてニュースになりがちな溶解出力系のプリンターは、モックアップには使えても、原型用に使うにはかなり厳しいものがあります。これらはランニングコストに優れ(樹脂1Kgで数千円)、出力時の設定も比較的簡単、出力品の強度もあるため、扱いやすい出力機ですが、肝心の表面がかなり荒く、また磨きやすいとも言えませんので、原型用途ならば複製するか、手で作った方が楽かもと感じるような手間を要します。(ABSも大変ですが、PLAは本当に扱いづらいです)
 それなりに大きなサイズで表面に繊細なディティールの無い、例えばコスチュームの一部などを、後加工前提の素材として準備する、というような用途であれば、充分に便利なものではありますが、フィギュアの原型用途として、アナログでは出来ないメリットを活かす事が目的ならばどうにも厳しい。自分が実見してきた範囲に限りますが、フィギュア製作の現場でも、「コストメリットと前準備の気楽さから、本出力の前の確認用出力」という用法が主だったものになってきていると思われます。
 ではその「本出力」、原型とする為の出力ですが、残念ながらこれを可能とする出力機は、導入費用、ランニングコスト共に非常に高価で、機械自体の扱いも溶解出力機と比べてかなり気を使います。またトラブルがあっても、ユーザーの総数が少なく、その殆どが企業に限られる為、情報交換も限定されてしまいます。おのずと、出力は出力代行業者に任せてしまうのがベター、というのが今日の現状でしょう。フィギュアやプラモデルのメーカーであっても、自前の出力機を構えている所はまだそう多くないのです。
 
■Form1
そんな中、高価な出力機とほぼ同じ機構を持ち、価格も個人に手が届くと期待されたのが、Kickstarterで発表された3Dプリンター「Form1」でした。
 それまで大変高価とされたガルバノスキャナを搭載し、表面平滑性に関しては業務用機としてもトップクラスであったDWS社のデジタルワックスシリーズとほぼ同じ機構を持っていたForm1は、それを知る一部の人間に衝撃を与えました。この機種は、樹脂にレーザーを当てて固めてゆくタイプの出力方式なのですが、スライスを積み上げる際の機構以外、その殆どは同じ構造だったのです。
 その後、パテント問題で業界最大手の3DSystemsから訴訟を起こされ、実際のリリースが伸び伸びとなっていたこともあって危険な空気も漂ってはおりましたが、Kickstarter投資組に関しては無事手元に行き渡ったようです。(訴訟に関しては現在不明)昨年末、浅井の所にも到着しましたので、同系統の構造を持つ業務用機であるDW028と比較しながら、その出力結果をレポートしたいと思います。
 
■スペックの比較
 
DW028
イニシャルコスト:約700万円
ランニングコスト:樹脂1Kgで約9万5千円(複数あり、これは比較的高価なもの)
ワークサイズ:65mm*65mm*90mm
スライスピッチ:0.01~可変
 
Form1
イニシャルコスト:現在で約35万円~
ランニングコスト:1Kg約1万5千円
ワークサイズ:120mm*120mm*120mm
スライスピッチ:0.025 0.05 0.1の3種
 
 スペックだけを見ると、Form1のコストメリットは圧倒的に優っているように見えます。スライスピッチの最小値こそ劣りますが、DW028でも0.025以下のスライスを使用する事は殆ど無く、またワークサイズの大きさは、それを補ってあまりあるメリットです。DW028の上位機であるDW029のワークサイズよりもまだ余裕があり、20倍(029比較ならば30倍)のイニシャルコストを考えれば、夢のような機械だと言えるでしょう。
 出力の為のCAMソフトに関しては、Form1は非常に簡素で、触れるパラメーターは殆どありませんが、その分扱いが簡単だとも言えます。また、両機種とも、出力時にサポートという、プラモデルで言うランナーのような部品を作らねばならないのですが、これにはそれなりにコツが必要です。Form1は、自動でサポートを作成してくれる機能がありますので、こちらも扱いやすさにつながると思われます。(今回のレビューでは自動サポートは使用せず、自分で作成したサポートで出力しています)
では出力結果はどう違うのか、実際の出力品を見てみます。
 
■出力比較
 
 今回出力に用いたのはこちらのデータ。去る1/4に、ロフトプラスワンで行われたトークイベント「アメコミナイト」用のプレゼントとして作成した、サイモン・ビズレー風のバットマンバストモデルです。サイズは、顎から頭頂部(耳含まず)が21mmとなります。肩を含めた左右幅が62mmで、DW028で出力できる限界サイズがこれでした。(今回は諸事情で、撮影時に3脚が使えず、非常にピントが浅くなっております。すみません。)
 

 左から、Form1で0.05mm、0.025mm、DW028で0.04㎜。
機械にもよりますが、スライスピッチは細かい程時間がかかります。今回きっちりと計っていないのですが、Form1の0.05mmで6時間、0.025mmで12時間、DW028の方で8時間程度の出力時間がかかったと記憶しています。
 尚、Form1での0.1㎜出力は、0.05、0.025と比較して一気に粗さが目立った為、比較対象外。あくまでも比較したいのは、Form1とDW028ですので、以降、Form1の比較対象は、より綺麗であった0.025mmの方を中心に行います。
 
 
Form1、0.025mm拡大
 
DW028、0.4mm拡大
 
 一見して解るのは、Form1の方がズレが目立ち、DW028の方が平滑です。このズレはスライスピッチの細かさとは関係なく、不規則に起きていますから、機械の剛性やその他の理由(考えられる可能性は後述)によるものと思われます。
 また、Form1の方は、目頭など、細かいディティールが埋まり気味で甘く、うっすらと太っていました。しかし全体のシルエットでは若干細くなっています。アナログに例えて言えば、一度レジンで複製し痩せたものに、サーフェイサーを多めに吹いたような感じでしょうか。エッジも尖っていません。
 元のデータをどれだけ正確に出力できているか、という点については一概に言えません。なぜならば、この方式の出力機は寸法精度が一定では無く、場所や状況によって若干の誤差を生じさせます。DW028も、寸法精度はよくないです。また、画面を見た印象と現物を見た印象の違いは、個人による主観も入ります(極端な事を言えば、浅井と貴方の目の離れ具合が違えば見える範囲が変わってしまいます)から、データとの相似性を厳密に比較することは困難です。その為、あくまでも2つを並べた時の比較、となります。
 
Form1、0.025mm背面
 
DW028、0.4mm背面
 こちらの角度だと積層ラインがはっきり見えます。ただ、これはあくまでも拡大画像であって、現物の印象はこの画像よりもずっと平滑で、綺麗なものです。
 
Form1、0.025mm別角度
 
DW028、0.4mm別角度
 
 マブタのあたりをご覧いただくと、ディティールが埋まっている、というのがおわかりいただけるかと思います。DW028や、別の業務機種であるパーファクトリーなどでも、スジ彫りなどは実際のデータよりも浅くなる傾向があります。
 
Form1、0.025mm別角度
 
DW028、0.4mm別角度
 
 口なども、やはりForm1の方が浅くなっています。目頭は特に浅く、埋まったようになっていました。またマスクの段差など凸エッジも丸まっています。これは胸部などありとあらゆる凹凸で起きておりましたので、Form1の特性であると判断して良さそうです。
 
Form1、0.025mm拡大
 
DW028、0.4mm拡大
 
 Form1で特に顕著だったのは、ほそい部品になるとズレが大きくなる事でした。
こちらの画像でも、耳がかなり大きくガタついているのがわかります。
 胴体など、断面積の大きなものほどズレが少なく、顔、耳など、断面積が小さくなるに従ってズレは目立つようになりました。これは当初、Form1のプラットフォーム移動方式か、機械剛性によるものかと思っていたのですが、3種のピッチすべてで同様の減少が見られた事から、樹脂が柔らかすぎるのでは無いか、と疑っています。
 Form1,DW028とも、出力終了直後の部品は生の樹脂にまみれ、超音波洗浄器でアルコールに浸して洗浄する必要があります。この際、DW028の出力品は硬すぎる程硬いのですが、Form1の樹脂は数時間ベタつきが取れず、出力後一日程は軟質的な感覚が残ります。この出力時点での柔らかさが問題で、細い部品ほどプラットフォームが移動する度にズレを生じ、固まりが大きければズレを生じづらい、という可能性が考えられるのです。まだ試しておりませんが、DWSの樹脂をForm1で使用すれば、この問題は改善されるかもしれません。
DWSの樹脂を固めるだけのパワーが無いからこの樹脂を使っている、という可能性も考えられますが、いずれにしても試す価値はありそうです。
 
 
 こちらは、1/6スケールサイズの頭部を、共に0.05ピッチで出力したものです。左がForm1、右がDWS028です。(DWS028の方は展示用に使用したものだった為、薄くサフを吹いていますが、スライスピッチを埋めるような厚みではありません)
 Form1は自動サポートを使用しました。
 Form1の樹脂は、グレータイプでも実際には半透明に近く、顔などは表情の印象が異なってしまうのですが実際には大きな違いはありません。バットマンと同じく、細部で甘く、全体に気持ち痩せたかな、くらいの差です。ただこちらは、バットマンよりもズレが少々目立つ結果になりました。
 
 
 Form1、DW028とも、出力方式を大まかに描くとこのようになります。
出力の方法は共に同じ、違うのはスライスを重ねる方法です。
 
 

 DWとForm1の方式の違いはこのようになります。
 レーザーに焼き固められた樹脂は、樹脂タンク(プール、トレイとも。透明アクリル製)の底に貼られた透明のゴムに貼り付いています。これをForm1は斜めに、DW028は垂直に移動するのですが、この貼り付く力はかなり強く、無理矢理ひっぺがすDW028は、1スライスごとに「ベコン!」という音が聞こえる程です。また、その力でサポートが千切れ、出力が失敗してしまうこともあります。
 Form1の斜めに剥がす方法は、その力を分散する目的で選択されたものだと思われます。当初自分は、その方式こそがForm1のズレを生む理由だろうと思っていました。
 その確認の為、この1/6の頭部は、以下の画像のような配置で出力しています。
 
  
 この場合、樹脂タンクは、顔正面に対して上下の動きになりますから、ズレが生じるとすれば、後頭部は綺麗だけど、顔面側がズレる、もしくはその逆、となるわけです。
 
奥行き側
 

手前側
 
 しかしこの頭部は、奥側に大きなズレを発生させ、手前側は比較的少ないズレでした。画像では伝わりずらいのですが、奥側には何箇所か、大きなズレがあるのです。
 左右はタンクの動きに差がありますが、奥側と手前の条件は同じはずです。ということは、タンクの動作方式はズレにそれほど影響していない、という事も考えられるのです。
 勿論、筐体の剛性自体が足りず、ズレは不規則に発生するのだという可能性もありえます。似通った構造で、ワークサイズが大きいにも関わらず、Form1の重量はDW028の半分以下で、全体の大きさも一回り以上小さいですから、剛性にそれなりの差があることは充分考えられる事でしょう。先に挙げた、樹脂の柔らかさと、この剛性の差が、今のところ一番臭いです。
 しかし、もしこの場合なのであれば、剛性という単純な問題で若干なり改善が見込めるかもしれない、という事でもあります。根本的な問題であれば評価は現段階である程度固まってしまいますが、筐体側の問題なら、今後Form1のポテンシャルはまだ改善でき、伸びしろがあるとも考えられます。
 
■その他の違い。
 この形式の出力機では、樹脂以外にタンクが消耗品になります。トレイそのものは消耗しないのですが、トレイに貼ったシリコン層が焼けて劣化するのです。DWでは複数箇所(028で4面、029で2面)、Form1では1箇所しか使用できませんが、Form1のトレイはDWより少し安価($69)です。
これについてはDWを使用しているユーザーでも、シリコンを再生する方法が模索されており、Form1も、ユーザーフォーラムでは既にその話題が出ていますから、いずれランニングコストを圧縮する方法は確率されるでしょう。
 
 また、出力時、樹脂は冷たすぎない状態にしておく必要があります。DW028はヒーターを内蔵していますが、Form1は暖かい部屋で出力を行う事を求められます。ただForm1は一人で移動が可能な重さですので、出力のための専用環境を作らねばならないというような事は無いと思いますし、出力時は暖房を付ける等、ちょっと気を使う程度で問題は無さそうです。
 
 更に、非常に重要な事なのですが、DWの樹脂は非常に硬く、切除するにも気を使いますが、Form1の樹脂は、出力直後こそ嫌な軟質性があるものの、硬化後は適度な硬さがあり、ペーパーがけもしやすい樹脂でした。これは原型用途としては無視できない大きなポイントだと言えると思います。
 
 
 あと余談として、Form1のカバーは、磁石で開閉確認がされるようになっているのですが、自分のForm1はその磁石が欠品しておりました。サポートに問い合わせ、磁石だということは確認できましたので、同型のネオジム磁石を購入し事無きをえましたが、この磁石にも表裏の違いがあるようで、カバーの開閉トラブルに陥った方は、ここを疑った方が良いかと思います。尚、サポートはユーザーページから行いますが、非常に素早く丁寧なものでした。
 
   
■買いか、否か。
 あくまでも、フィギュア等の原型用途に限って、という前提だと了解していただきたいのですが、今現在、個人でも入手できる3Dプリンターで、フィギュア原型の為に使用し、出力後、手加工で仕上げ直す事は覚悟している、という条件であれば、Form1はかなり有効な選択肢だと感じました。
 樹脂も比較的に磨きやすいものですので、固まり感のある美少女フィギュアの身体、手足などでは大きなストレスは無いでしょう。一方で、薄いもの、細いものなどは、評価が1ランク落ちます。美少女フィギュアでも髪の毛の先端や薄いスカートなどは苦手でしょうし、細分化されたメカ原型や、今回サンプルに使用したバットマン、クリーチャーのように情報量が多めのキャラクターは、アナログでの作り直しにそれなりの苦労を伴うと思われます。
 やはりDWと比較すれば、明確にクオリティの違いはわかります。DWがデータを出力して原型とするならば、Form1はデータを出力し、磨き直して原型とするマシンであると受け止めておく必要はあるでしょう。
 しかしそれは、価格で数十倍も違う業務用出力機との比較であって、同じ数十万円クラスである、他の溶解樹脂プリンターと比べれば、圧倒的に原型に向いている事は間違いありません。磨き工程も遥かに楽なはずです。
 むしろ、高価なプリンターはもっと頑張ってくれよと言いたいくらいですが、樹脂溶解タイプでも業務用のu-printなどは安価な樹脂溶解タイプと同じとは思えない程、寸法精度に優れていますし、つまりは「基本方式は同じでも、この差が業務用機のノウハウであり、超えるのが難しい所」があるという事なのでしょう。
 現在Kickstarterでは新たにSLA3Dというプリンターの投資を募っていますが、こちらもガルバノスキャナを使用したタイプで、Form1よりも更に広いワークサイズを備えています。しかし実際にこれがForm1よりも優れているか否かは、数字で読み取れる範囲ではわかりません。そもそもKickstarterはそういったリスクも含めてのファンディングサイトですし、前述のように、同じ方式でも、そこから生まれる成果物のクオリティは大きく違うからです。
 ただ、Form1をきっかけに、個人ユースで(原型用途に使う)3Dプリンターは、一段、二段、くらい現実的になったように思います。導入して後悔せず、期待通りの結果が得られるのはまだしばらく先の話だと思いますが、3Dプリンタを導入する事で、それなりに役に立つ時代の先触れとして、今導入したいんだという方に限っては、Form1は充分おすすめできる内容でした。
 
 
■購入に際して。
 日本での購入は、これまでKickstarterでの募集時のみであり、オンラインサイトでは注文できなかったForm1ですが、現在は配送先に日本が追加されているようですので、購入はオンラインサイトから行うのが懸命だと思われます(但し、本リリース前ですので、実際に購入可能かは現在未だ確認されておりません) (追記:2013年12月の段階で、公式から、日本への出荷は現状未定であるとの返答を得たという情報を教えて頂きました)。クレジットカードは必要になりますが、通販自体はそれほど難しいものではありません、中学生レベルにも達していない自分が大丈夫だったくらいなのですから。
 気をつけていただきたいのは、Form1は現在、日本での正式な代理店を発表していない事です。代理店のように輸入販売を謳い、またそのような業者のプレスリリースを掲載している著名なニュースサイトもありますが「拙い英語での海外通販よりも、日本の業者を通した方が楽だし安心」と思ってしまう前に、まずその業者の評判を調べてみてください。日本語が使える事と、安心とはイコールではありません。革命的に安価になった機械とはいえ、個人の買い物としては大変に高価な製品です。後悔される事の無いよう、しっかりと確認された上での導入をお勧めいたします。
 
 
 
 
 
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