その後のForm1 忍者ブログ
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■その後のForm1
 前回書きました、3Dプリンター「Form1」。
先日の段階で予測していたズレの問題や、樹脂の違い等を検証してみました。
ただ残念ながら、今回はスッキリとした良いオチがありません。
検証結果には法則性を見つけられず、このテキストの最後に待ち受けているのは「結局、自分には改善出来ませんでした」という実に情けないものであります。
 とても胸を張れるようなレポートではありませんが、前回書いたいくつかの予想が、その通りでは無かったという事を明らかにしておく意味でも、公にしておこうかと思います。情報価値としては薄い記事になりますが、前回の記事を読んで下さった方は、訂正としてご一読頂ければ幸いです。
  
■ズレに対する検証
 前回の記事では、出力品に発生するズレ(積層線では無い、規則性の見出し難いズレ)は、部品の細さ、薄さと、樹脂の柔らかさが影響したものでは無いか、と予測しました。それを検証する為、今回は下図のようなモデルを出力しています。
 
 
 テストしたのは、段差のある柱2種と、1mm厚の板、2mm厚の板、1mm厚の板をT字型に組み合わせた物の5種となります。段差のある柱は、一つが真っ直ぐ、もう一つは斜めにセットしました。柱のサイズは、根本で5mm、先端で1mmです。モデル自体は、太い方を下、細い方を上として作っていますが、Form1はプラットフォームを上に引き上げる形式ですので、実際に出力される際は、この画面のような形になります。また、2セット同時に出力しているのは、出力箇所による誤差を確認するためです。
 
  
 ここで注意しなければならないのは、Form1は筐体の正面と、出力する際のCAM画面が90度違うという事です。見た目の正面は、ボタンや液晶画面がある面に思えるのですが、CAM画面での正面は向かって左、樹脂タンクの可動軸側が正面に設定されています。おそらくFormlab側でも、この面が一番綺麗な面が出せるものとして正面に設定しているのでは無いかと思われます。
 今回のテストモデル2セットは、筐体から見れば左右、画面で見れば前後に配置している形になります。
 以降、この記事では、CAM画面上の正面を軸側、後ろを開き側と記載します。
 
 
 グレー樹脂、軸側。
 前回の記事で、バットマンの耳だけが激しくズレていた事から、樹脂の柔らかさが影響しているのでは無いか、という仮説を立てましたが、それは早くも否定される結果となりました。1mmの先端も、5mmの根本も、ズレに大きな違いはありません。むしろ根本に近い部分に大きなズレがあります。バットマンの耳よりもあきらかに細い部品がズレていないという事は、ズレはサイズとは違う理由で発生している、という事になります。
 1mm厚の板、2mm厚の板でも、厚みによる差は見られませんでした。
 唯一、T字型の板に、ズレでは無いのですが、表面が溶けたような荒れが発生していました。これは時折発生するのですが、似た状態がDWでも起きる事があり、その際は代理店から、樹脂のコンディションが影響しているのではないか、という説明を受けました。これもその類かもしれません。
 
 
 グレー樹脂、開き側です。
 1mm厚の板は洗浄時に紛失してしまったのですが、その他の部品は軸側と目立ったクオリティの差はありません。軸側と開き側では、構造から思い浮かべがちなズレはそれほど出ない、という事かもしれません。
 しかし画面上の左右(プラットフォームの支柱側と液晶画面側)は、どの部品もズレが目立ちました。これは前回の記事で、1/6の頭部に見られた現象と同じです。仕事でかなりたくさんの出力を行いましたが、この傾向は共通していました。
 
 
 クリア樹脂 軸側配置
 

 クリア樹脂 開き側配置

 こちらは前回の記事では使用しなかったクリア樹脂です。画像で見ると、僅かに開き側の方が荒れているかなと感じますが、実見では区別が付かないレベルです。ツイッターで「クリア樹脂の方がエッジは立つ」と教えて頂いたのですが、確かにエッジはシャープな印象がありました(画像では伝わりづらいかもしれません)。ただ、樹脂そのものの硬さは、グレーよりもほんの少し柔らかいようです。
 こちらも、軸側、開き側での配置による差は少なく、面も綺麗なものでした。対して支柱側と液晶画面側のズレは目立つ、という感じです。
 
 
 今回、何故か2mm厚の板の根本部分に気泡のような未硬化部分が発生しました。気泡のような形状は全て微妙に異なりますので、データ側での欠損では無いはずですが、不可解な事に、出力位置やポリゴンの細かさを変えても大体同じような場所に発生しました。上記画像では、出し直してみたものも含め、3つの2mm厚板すべての根本に発生しています。
 グレーの方も、気泡では無いのですが根本に近い位置に大きなズレが確認できました。
 ズレに関しての憶測として、Form1は樹脂タンクの底にシリコンゴムを使うのですが、そのゴムは流し込みで成型されている為、厚みが正確ではありません。DWではタンクごとの調整作業を求められますが、Form1にはその工程がありませんので、根本付近ではゴム厚の誤差がなんらかの影響を出しやすい可能性が考えられます。尚、自動サポートは若干高めに設定されており、自動サポートを使う限りは、出力品には影響しないかと思われます。
 
■これは実証例が少ないので、話半分で読んで頂きたいのですが、自分の環境に関しては、グレーに較べてクリアの方が硬化トラブルが多かったです。これまで、ブログに上げていないものも含めて、グレーの失敗は一度も無いのですが、クリアの方は、今回のテストだけでも3回失敗しています。失敗の内容は、出力途中で硬化が連続せず、部品が切れてスライスだけが樹脂層を漂う、というもの。前述の気泡も関係あるかもしれません。もしこれが偶然で無く、何かしらの理由あってのものだとしたら、それは樹脂の問題というよりも、CAM上でのクリア樹脂設定(Form1では樹脂ごとにプリセットされた設定を選択します)に何かしらの問題があるのでは無いかと思われます。
 
 前回の記事で書いたDWの樹脂ですが、こちらはもう全くダメでした。反応はするのですが、どのプリセット設定でも、溶けかけたグミ程度の硬化しかしません。
 樹脂によって硬化する波長は違いますが、これまでDWでは他社性の樹脂も設定次第で固まるケースがあった為、駄目元半分、期待半分という所だったのですが、今回に関しては駄目でした。
 ただ、これもツイッターで見かけた話なのですが、DLP式のB9creatorで使用する樹脂とForm1の樹脂のミックスは硬化した(しかも出力結果は良好だった)という話もあるようですので、いずれForm1の設定を自由に触れるようになれば、このあたりの事情は変わってくるやもしれません。
  
  
■冒頭でも書きましたが、今回の実験では、改善の為の成果と呼べるものは何ら得られませんでした。これ以上は、レーザーの繰り返し照射精度や、樹脂ごとの硬化波長云々のレベルになってくると思うのですが、そうなると自分ではお手上げです。知識も技術も足りませんし、そこまでしてForm1のクオリティを追求するなら、DWで出力します。
それでも、経験則としてForm1の傾向を挙げるのであれば、
 
・軸側と開き側の差は、0では無いがそれほど大きく無い。
・支柱側、液晶画面側はズレが発生しやすい。
・タンク底面の近い場所ではトラブルの可能性あり。この部分は大きめのサポートを設け、出力品に悪影響が出ないようにする。
 
くらいのものでしょうか。
うーん……大山鳴動鼠一匹。
 
 さて、検証は上手くいきませんでしたが、実のところ、Form1はかなり気に入っており、毎日のように出力を行っております。回転率はDWの何倍にもなります。
 ランニングコストが安く、出力までの手間が少ない上、出力の失敗も少なく安定している事から、可動検証や形状確認を気楽に行えるのが、原型用途としてはとても有用です。
 また、硬化後の樹脂も非常に研磨しやすく、スポンジペーパー程度でツルツルになりますので、研磨してしまって構わない形状であれば、検証用だけでなく原型としての使用も十分に可能です。硬度はそれなりにありますので、ディティールを掘り足すのは大変ですが、不可能というわけではありません。
 接着も、硬化前の樹脂を塗りつけ、紫外線ライトを当てておけば強固に接着できます。(ただし、奥まった部分だと紫外線が行き渡りませんし、ライトを当てすぎると反る事がありますので注意は必要です)

 フィギュアが出てくる夢の機械では無いものの、原型作成には十分役に立つ道具である事を再確認して、実験はとりあえず一段落としたいと思います。
 
 
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