スピードスカルプトをやってみる。 忍者ブログ
■ここしばらく、自分の造形仕事にはZBrushという3Dソフトが欠かせなくなっています。このソフトは直感的に、手早く形にできるというのが魅力的で、YouTubeなどでも、あっというまに造形される人たちの凄い映像を見る事ができます。
 昨年、パシフィコ横浜で開催された、CEDEC2013でも「スカルプト・マイスター!」という企画が催され、カプコンの黒籔裕也氏、バンダイナムコの重山孝雄氏、Double Negative Visual Effectsの田島光二氏(ハリウッド風進撃の巨人パロディでご存知の方も多いと思います)、スクウェア・エニックスの平田佳也氏が、わずか2時間で四聖獣を作る映像が公開され、これは今もニコニコ動画で作業風景前編を見る事が可能です。
 
 顔だけを作る、適当なバストまでを、見える範囲だけ作る、という事なら、2時間での造形は出来なくもありません。しかしこれらの映像で驚いたのは、龍の下半身など、デザイン的にオミットした部分はあっても、基本的に全身に近い範囲で造形されていることです。全身を作るということは、手間がかかる部分を見せないという誤魔化しをせず、全身から逆算した時間配分を守って作業されているはずです。しかも、事前にカスタムアルファやベースメッシュは用意されていません。基本機能のみです。
 
 また、先頃榊馨さんが公開された動画は、時間こそ7時間超ですが、漠然と形を作るのでは無く、非常に整理された綺麗なデータとなっており、的確な機能の扱いはデジタルのメリットを強く感じさせてくれる必見の内容です。
 
 自分も、遊びとして数時間で何かを作る事はあります。それは如何にも手早く作ったように見えるのですが、実際には「2時間で出来ました」では無く、「2時間でやめました」なだけだったりします。髪の毛をつくれば時間がかかる、だからハゲを作っているだけ。全身を作れば時間がかかる。だから胸像風にしているだけであって、一見して短時間で作れているようでいても、実際に手が早いのとは、ちょっと違うのです。見えない所は作らない事も多いですし。
 
 そこで、自分がどのくらい時間を費やし、どこで躓きやすいのか、テストがてら記録をとってみました。
 今回の対象は、Fate/staynightのバーサーカーです。
 とある原稿の素材用に必要だったもので、丁度良いと選びましたが、ツルツルとした女の子キャラよりも作りやすいから、というのも理由でありました。
 ちょっとでも有利な条件にしようと悪あがきをしてしまったわけですが、これが期待を遥かに下回り、自分の現状を思い知る結果となり……。
 2014年1月現在の記録として、記憶が鮮明なうちに書き記しておきます。南無。
  
30分経過。
Zスフィアで全体をざっくり作り、アダプティブスキンにしてから整えている段階です。原稿用なら上半身だけあれば良かったのですが、今回は全身にしました。
指はコピペするつもりで、この時点では作っていません。
 
 
60分経過
ポリゴンは荒いまま、形状を整えていってます。指は一本作ってから、コピペして大きさを調整。Zスフィアや、指のコピペなど、早く作る事を意識して、普段あまりやらない方法を選んでいるものの、この時点で「スカルプト・マイスター」の皆さんが使われていた持ち時間を早くも半分消費。
 
 
90分経過
ポリゴンを細かくしてあちこちを整えはじめました。指はダイナメッシュで一体化。作っている時間よりも、整える時間の方が時間を食っているような気がします。サブモニタにはバーサーカーと人体の資料を映し、手元にも資料を置いて確認しながら作業を進めました。
 
120分経過
CEDECだったらここで終わりです。
顔を作り、プロポーションをちまちまと弄っています。ディティールを配置した後にプロポーション変更が効く、という所はデジタルの強みで、僕はその強みに頼っている事を痛感します。粘土だったらプロポーションを変えた所はディティールも作り直しですので、もっと多くの時間を必要にした事は間違いありません。
 
  
150分経過
髪の毛をZスフィアで配置して造形開始。ここからものすごく手間取りました。細く尖った髪の毛自体、単純なブラシ作業だけでは作りやすい形ではありませんし、髪の毛を配置する事で「バーサーカーに見える、見えない」が気になりはじめますので、髪の毛以外の顔やプロポーションも頻繁に弄ってしまうのです。落書き気分の粘土遊びならば、見える角度だけそれっぽく見せて誤魔化しますが、今回それは避けるつもりでした。目を背けていた苦手部分がはっきりとわかる一幕でした。
 
  
180分経過
3時間が経ちました。もう延々と髪の毛を作っています。
全然目立った進行が無いように感じます。
 
180分経過その2
後ろからみるとこんな感じです。もうただただ、ちまちまと髪の毛を調整。皮膚は表面にアルファ(立体テクスチャのようなもの)を押してしまえば見た目のハッタリは効くのですが、頼ってしまいがちなので禁止としました。また、髪の毛の表現には、スネークフックブラシやファイバーメッシュという選択肢もありますが、いずれも原型用途を目的とした技術には不向きと考え、今回は避けました。
 
210分経過
いやーん、全然変わってない。まだ髪の毛を整えつつ、所々細いラインを入れはじめたあたりでしょうか。この後も、髪の毛は最後まで足したり消したりを続けていました。初音ミクのようなパキッとした髪の毛だったら、別ソフトでないと自分は仕上げられません。
 
   
240分経過
この段階まで、胴体のトポロジーもダイナメッシュを使用した適当なものでしたので、Zリメッシャー→プロジェクトオールで、ポリゴンの配分を調整、慣らしたり失敗した所を整えたりしました。こういった直接造形と関係無い部分でも、結構時間を食ってます。
あと、今気づいたのですが、この画像のみパースがかかっていますね。作業時に切り替えていたからだと思いますが、ちょっと印象が違います。
 
270分経過
全身のポリゴン配分を調整した事で、細かめの情報を足していけます。前述のように、アルファは避ける方向でちまちまと描き込んでいきます。
なんか、エンジョイ&エキサイティングの人みたい。
 
  
330分経過
手首、足首のリングと、スカートのアタリを作ります。部品が揃ってくると、全身のバランスも気になり始めますので、プロポーションに大きな変更が入っています。上手い人なら、調整無しでいきなりベストバランスなんですが、自分には無理なのです。デジタル補正万歳。
実は270分の時点で、もうスピードとか無理っすよ……という諦めが発生しており、30分刻みのスクリーンキャプチャも忘れてしまった為、一時間後にとんでいます。リング、スカートとも、プリミティブからの変形ですが、実際にはローポリでベースメッシュを作った方が早いと思います。ZBrushにローポリの作図機能があると、かなり便利だと思うんですけどどうですか、そんな事無いですか。シャドウボックスとか使った方が良いのかなー。
 
 
390分経過
更に一時間後。スカート回りのディティールを入れました。単純な形状ですが、かっちりと形が決まったものはやっぱり面倒くさい。スカートはきちんと全体に薄くはなっておらず、上半分はムクの状態です。ここで、金属部分と布部分の差を作るために、ついにアルファを使ってしまいました。カスタムでは無くデフォルトで入っている範囲のものですが、ブラシだけで質感を分けるのは無理でした。
もう6時間越えちゃっております。しかもここで、タイマーを止めてご飯を食べたりしております。作業自体は止まっていたものの、思考は続いていたでしょうから、これはちょっとズルじゃないかと思いますが、もう無理ー。むーりー。
 
終わり、もう終わり!と決めた時には、500分を経過しておりました。8時間以上です。
ご飯を食べた事でもう緊張の糸は残っておらず、作業速度は酷いものとなりました。
ダラダラ~と武器を作り、のそのそ~と微妙な配置をしましたが、この荒々しくも大雑把なデザインの武器だからなんとか作ったものの、繊細なデザインを施した武器であったなら、もうやめてしまっていた可能性が大なくらい、集中力がありませんでした。
 
 そんなわけでバーサーカーでした。細部の情報量が無い……。
 この後、ざっくりと色を塗ったり、せっかく色を塗ったのにモノクロに加工したりして、本来の目的だった原稿に使用しました。
 始める前は「何とかなるんじゃね?」と思っていたのですが、いざやってみたら、もう全然「スピード」スカルプトじゃありませんでした。
 スピードスカルプトばかりを扱った書籍が発行されているのですが、そちらの持ち時間は一人6時間、実際には皆さん4時間ほどでfixされていています。前述の田島さんが2011年に登壇された講義では、バストモデルではありますが、今よりもずっと扱いづらい頃のZBrushで、講義をされながら90分だったそうです。
 やはり、全身を作るか否か、という差はあるとは思いますが、今回痛感したのは、全身か部分かという事よりも、最終的な落とし所を前提として考えるべき時間配分のマネジメント力の重要さでした。それに、今回のバーサーカーは、手早く作る事を目的に割り切った造形でしかありません。榊馨さんの公開された動画のように、整理されたものでは無いのです。
 
 単純に手が遅いのか、ツールの理解が足りないからか、落とし所が下手なのか、その全てなのか。造形力そのものに関しては頑張りますとしか言いようも無いのですが、ツールの理解については我ながら不足している自覚せざるをえませんでした。直感的に形が作れるソフトであるがゆえに、時間さえかければ複雑な機能を使わずとも、それなりに何とかなってしまいます。その為、それ以上の理解を怠ってしまっていた、という事なのかもしれません。ゆっくりやっていると気にならなかったものが、短時間に集中して作ると表面化してきた感じです。
 反省点は山盛りありますが、現時点での自分を測れるという点では、記録を取りながらの作業は有効ではありました。
 こと自分は、ゴールから逆算して配分を決めるのがとても苦手です。
一部が完成して残りが手付かずよりも、全体的に70点で完成させてから底上げを図る方が、最終的なクオリティは上げられると、経験上ではわかっていながら、ずっと苦手なままです。今回はあらためてその苦手要素を知ることができました。

 何やら、反省点ばかりで、書いていて尚更凹みつつあるのですが、短めの時間でぶっとばしに作る作業は、楽しいのもまた事実です。自分の問題点を浮き彫りにさせる練習として、きちんと時間を計りながら進めるのは、学べるものがありました。
 
 
 尚、このバーサーカーは。30日発売のTYPEMOONエースVol9に、半ページのコラムイラストとして使用しました。
 つまりこの記事は、長々とした宣伝だったわけですね。
 
どっとはらい。
 
PR
[115]  [114]  [113]  [112]  [111]  [110]  [109]  [107]  [106]  [105]  [104
twitter
カレンダー
02 2017/03 04
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
最新トラックバック

忍者ブログ [PR]