10分で作る方法についての補足 忍者ブログ
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■さて「スズメの学校2時限目」の本筋は「原型の為のデジタル活用」でしたが、
終盤のフリートーク的な部分で、ふと自分が発言した、
「テレビを付けて、見かけた顔を10分で作る」
「それを毎日10個作る」
「10日に1日は30分かけて作る」

という造形法について、多数お問い合わせを頂きました。
全くの初心者の方から、プロの原型師さんからもメールを頂きました。
正直、本編よりもこっちの発言の方が影響大きかったんじゃないかとすら思います。

ただ、これは自分が実践した方法ではありますが、
言葉の通りに延々と続けていても、効果は限定的です。
この方法には一定の効果がありますが、
段階を経て、意識を変えてゆく必要があります。
これは文章では説明がしづらく、
時間をかけてゆっくり説明したい所ではあるのですが、
このまま言葉だけが独り歩きしてしまって、
実践して下さった方の時間を浪費させてしまっても困りますので、
ここで考え方を補足させて下さい。

■まず最初に、この方法の意味を説明致します。

1)「テレビを付けて、見かけた顔を10分で作る」
これは粘土を触る事、造形する事を当たり前の日常とする為です。
テレビから対象を選ぶのは、作りたいものを選ばず、
得手不得手に関係なく造形するため、
10分で作るのは、長時間触る事で、作ったものに固執してしまうのを避け、
作る、という行為への意識を、呼吸するように行うのを目的としています。
また、短時間で作業を行う事で、作ろうとしている形状を、
全体像からまとめ、細部で足踏みしない癖を付ける事も目的です。
最初は目を作るだけで終わった、というような事があるでしょうが、
細かい所よりもまずシルエットを作らなければ形にならないのだと、
ここで学ぶ事ができます。
枚数をこなすクロッキーと目的は同じで、
10分という数字そのものは重要ではありません。
3分でも良いし、30分でも良いのです。

2)「それを毎日10個作る」
これは(1)と理由が被りますが、固執せず、
作る事への無駄な緊張感を捨てる為に、何度も続ける必要があります。
また、数をこなす事で、何故出来ないか、どこで詰まるのか、
という気付きのタイミングを多く得られるようにするのも目的です。
(1)と同じく、10個という数字そのものは重要ではありません。
最適化を繰り返す訓練なのだ、と考えて頂ければ良いかと思います。

3)「10日に1日は30分かけて作る」
これは、繰り返しの中で気づいた苦手な部分や、
試してみたくなった要素を、じっくりと時間をかけ確認する時間です。
かといって、そこであまり時間をかけると、
「こうやるのが正しいのだ!」と、
自身の「気付き」に感動してしまう事があります。
方法を見つけた感動というのは中々厄介で、
その段階では素晴らしい発見に思えても、
間違いも少なからず含んでいます。
しかし「見つけた」という感動体験は、
それを信じるあまりに新しい知識や気付きを阻害してしまい、
その段階での正解を、その人の手癖にしてしまいがちです。
ですので、確認しつつ、でも手癖としない為に、
適度にゆっくりと作って確認を行うのが、この工程の大事な所です。
いつもよりも落ち着いて作るのが目的ですので、
30分と書いているのは(1)の3倍位の、と解釈して下さい。
タイミングも10日に1度で無くとも構いません。

■ここまで読まれて、気づかれた方も居るかと思いますが、
この方法は、作るという行為が身についていない方や、
数のこなし方がわからない、作っていても立ち止まってしまいがち、
という方の為のトレーニング法です。
有体に言えば、既に作れる人にとっては意味がありません。
作れる人にとって有益なのは「テレビで見かけた人を作る」
という箇所ぐらいだと思いますので、短時間で数をこなす必要はありません。

■では、経験そのものが少なく、数をこなしていない人は、この後どうなるのか。
このまま同じ方法を繰り返していても、ここからはあまり進歩がありません。
作る事の意識的な障害をとっぱらった後は、学びながら作る事が必要になります。

ここまで数をこなしてきて、何となく形を出せるようになったものの、
毎回クオリティを保てる、という人は、まだ少ないと思います。
(この場合のクオリティとは、細かなディティールの事ではなく、
そもそもの顔の形が毎回狂わずに出せるか否かの要素を指します)

ここで有益になるのが、昔ながらの美術書です。

原型師や絵描きの友人と話をしていると、時々、
「結局ルーミスとかハムに戻るな」という会話になる事があります。
ルーミスとは「やさしい人物画」等を記したアンドリュー・ルーミス氏、
ハムとは「人体のデッサン技法」等をジャック・ハム氏の事ですが、
会話の要点としては、上記2冊の美術書を指します。

これらの本は、絵や造形を学び始めた時、手に取る定番の書物です。
しかし買ったものの、今ひとつきちんと実践しないまま、
結局は独学で学んでしまいがちな経験をしている人が多いのですが、
描ける、作れるようになった後で、ふとこれらの本を開くと、
「ああ、このページはそういう事だったんだ!」と、
目からウロコが落ちるような事があります。
始めたばかりの頃は、上手くいかないイライラや、
一度に押し寄せた情報量で、本を理解する余裕も無かったのが、
内容が理解できるようになって、初めて「読める」ようになった、
という事なのでしょう。
浅井にも同様の経験があります。

これらの本には「こうすれば描けますよ」的な解りやすい解説が掲載されていて、
早く絵を描こう、造形をしよう、という意識でページを開くと、
どうしてもそのチュートリアル的なページを重視してしまうのですが、
ここで重視して頂きたいのは「面構成」と「バランス」を解説したページです。
人間の面構成やバランスには基本があります。
勿論人によって顔の形は違いますが、基本的にこうなっているのだ、
という前提を知ってから確認すると、
「この人は、頬のこの面が広いのだ」
「この人は、鼻の下がこのくらい長いのだ」という風に、
どの人も基本の顔からのバリエーションである事に気づけるようになると思います。

これは、若い原型師に教えた事のある経験談としてなのですが、
人間の顔を、構成から観察した経験のある人は、普通あまりいません。
その為、いきなり面構成を覚えよう、となっても、
人間の顔を面構成として捉え、覚える事は中々出来ないものです。
しかし、とにかく人間の顔(実在の)を作り続け、
そして上手くいかない、上手くいくにはどうすれば良いのか、
と悩んでいる人にとっては、単純化された顔の面構成を説明した図やアイテムは、
一気にモヤモヤを晴らしてくれる、わかりやすいテキストとなるのです。
つまり、先に説明した(1)~(3)は、この段階の為の貯金、
ダムに溜めた水のようなものと言っても良いでしょう。
この段階で「そうか、頬はこういう面になっているのか」というような事を意識して、
また作り始めると、造形内容は飛躍的に「出来た」ものになります。

DSC03325.JPG
※顔の面構成を単純化したサンプルの例(美術用品として販売されてます)

しかし気をつけて頂きたいのは(3)の説明でも触れましたが、
「これが正しい」という意識に陥る事です。
確かに人間の面構成やバランスには一定の法則がありますが、
人それぞれのバリエーションも豊かです。
これまで、テレビに映った様々な顔を作ってきた人であれば、
その基本が中々上手く当てはまらない事にも気づくでしょう。
それをどう当てはめるべきかを考えながら作るようになれば、
それは分析力や造形力を高めながら進む事が出来る、学びのサイクルになります。

■先に「これが正しい」という形を学び、それを意識しすぎて、
「アニメキャラの形なんか嘘だ」と言う答えに行ってしまい、
そういった造形が出来なくなってしまった人が、実は結構居ます。
造形を行う際には、何段階もの心の敷居がやってきます。

どうせ上手く形に出来ないというスタート段階の敷居。
始めてみたものの、迷い立ち止まってしまう敷居。
ある程度出来るようになっても、そこで解答を決めてしまう敷居。

そういった敷居を上手く越えながら、作り続ける方法、
それを2年続けられれば、誰でもそれなりに作れるようになる、
というのが、先日のイベントで触れた言葉の真意でした。

これは本来ならば、段階を経ながら説明するもので、
文章で並べても、あまり実感を得られるものでは無かったかも知れませんが、
あの言葉を元に造形を始められた方がおられたのであれば、
ご参考になれば幸いです。
 

 ■あと、スカルプトリスやZbrushを使ってみたけど、上手くいきません、という方。
もし、粘土なら出来るのにソフトなら上手くいかないというのであれば、
それはソフトの扱い方に拠る所も大きいと思いますが、
そもそも形にならない、というのであれば、
それは作りたい形が決められていないか、まだ根本的な造形力が足りてません。
そうであるなら、今から粘土を練ってみるのも良いものですよ。
デジタルは素材の一つでしかありませんから、
造形そのものを学ぶのであれば、ダイレクトに形を出せる素材が一番です。

 

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